スパークス・グループ株式会社

29:資本を効率的に有効的に使っているか

企業の目的

預貯金が増えるもどかしさ

資本市場には、さまざまな「キャッシュフローの泉」が存在する話を、これまで繰り返しお伝えしてきました。私たちは、ファンド運営のプロフェッショナルとして、新しい「キャッシュフローの泉」を見つけたいと考えています。
そんな中、個人金融資産の中で、現預金が増え続けている現状には、大変もどかしさを感じています。
個人金融資産約2000兆円のうち、現預金の額は実に1090兆円にのぼります。この額は、日本の国家予算の約
10年分にあたります。日本の人口が約1億人だとすると、1人1000万円ずつ持っている計算になります。
預貯金の保有比率を年齢別にみると、1000兆円の60%以上を60歳以上が、25%を70歳以上の非生産年齢に属する層が保有していることになります。この膨大な金額のお金が、ほとんどゼロ金利の預貯金、つまり、お金が働いていない状態で眠ってしまっているのです。
また、お金を貯め込んでいるのは、個人だけではありません。日本企業の現預金の総額は約320兆円と、こちらも過去最大規模です。個人金融資産が現預金に偏在していること以上に、株式を市場に公開している上場企業が一定額以上の現預金を貯め込んでいるのは憂慮すべきことだと思います。

経営者の最も重要な意思決定は、資本の配分

現預金を貯め込んでいる経営者には、「有事の際、必要になるお金だ」「有事に際し守るべきは社員と取引先で、株主ではない」と、それぞれの経験、会社の歴史から学んだ理由があるようです。
私も「会社は株主のモノである」、従って「株主の利益が他に優先する」といった偏った市場主義には賛同しかねます。ただ日本企業は、経営者の都合に偏った経営で、株主が求める合理的、常識的な提案がまったく無視されることが、まだよくあるように思います。株主が求める当たり前の提案にしっかりと向き合えない上場企業の経営者が社会的責任を全うしているとは言えません。
ロバート・ハグストローム著『株で富を築くバフェットの原則(最新版)』では、「経営者の最も重要な意思決定は、資本の配分である」という言葉が紹介されています。収入、資本、利益の分配バランスをどう考えるかが、経営者が最優先とすべき仕事だというのです。
上場を選択した企業は、上場企業としての社会的信用を確立し株式市場で資金調達の道を拓くことが、自らの企業にとってメリットがあると考えているはずです。社会的存在としての道を自ら選択した上場企業は、内輪の利害関係者に偏った視点ではなく、株主を含む外部のステークホルダーにもしっかりと配慮して資本や現預金の効率性を考えることが大切です。
企業を取り巻くステークホルダーは、売上高の対象となる顧客、費用の対象となる取引先や社員、税金の対象となる国や自治体など、それぞれの目的を持った多様なさまざまな個人、組織の集まりです。中でも、利益分配のプロセスにおいて一番劣後し、最大のリスクをとっている株主が、利益配分を監視していくことが、スチュワー
ドシップ(受託責任)やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の考え方の根本にあります。

日本の資本市場のコペルニクスでありたい

創業から30年余り、スパークスではこの原理原則に沿って株式投資を考え、実践してきました。少し大げさ言えば、最初の頃は、天動説が常識の社会で地動説を唱えたコペルニクスのように、日本社会では奇異な考え方だったように思います。
しかし最近は、日本の「稼ぐ力」を向上させることに対し、行政も理解し、スチュワードシップやコーポレート・ガバナンスを強化していこうという雰囲気が生まれていると感じます。
企業経営者の中にも、ROEの意味を正しく理解して、その向上を目標とする正の循環が生まれ始めています。株主としっかり向き合って経営することが日本でも新しい常識になりつつあるのです。上場企業が社会の公器として、合理的な理由、戦略を持たずに資金を貯め込むのではなく、企業家的視点をしっかり持って投資し、必要の
ない資金は株主に還元していくようになれば、日本経済だけでなく世界経済を浮揚させられるだけの力を日本企業は持っていると確信しています。
日本の株式市場に散見されるステークホルダー間のゆがみを解消すれば、日本企業の実態価値を低く評価している投資家の見方もポジティブに変わるはずです。ステークホルダー間の資本、利益の分配と生産性のゆがみが解消することをテーマに、スパークスも引き続き頑張ります。
株式投資とは、「企業の実態価値と価格(株価)との間に生じる差異の裁定機会に主体的に参加すること」と繰り返し申し上げてきましたが、まさに、このゆがみの裁定に大きな投資チャンスがあると考え、主体的に参加していきたいと思っています。