スパークス・グループ株式会社

20:「割安だ」と思ったら、「なぜ安いのか?」を考える

「なぜ」を繰り返す

実態価値と価格の間に生じる差異

スパークスでは、投資とは「企業の実態価値と価格(株価)との間に生じる差異の裁定機会に主体的に参加すること」と定義しています(※コラム「「中長期的に利益を出していく」参照)。では「裁定機会に参加する」とはどういうことか。大まかなフレームワークを説明しましょう。
まず企業の実態価値をどう算出するかです。スパークスでは、大きく3つの要素があると考えています。それが「3つの輪」、つまり「経営者の質」「ビジネスモデル」「市場の成長性」です(※コラム「「3つの輪」の中に入る会社を探す」参照)。この3要素を財務情報、非財務情報、周辺情報など、ありとあらゆる要素を織り交ぜながら分析し、企業の実態価値を算定します。
次に、対象企業の時価総額とスパークスの運用者が算出した実態価値を比較してみます。実態価値よりも時価総額が安く放置されている企業が投資対象となりますが、これだけでは十分条件とはなりません。

「なぜ安いのか?」 その3パターン

そこで、次に着目するのが「なぜ安いのか」ということです。要因は、大まかにいって、以下の3パターンに分類できると考えています。

①地理的な制約や資金の性格による時間や収益目標の制約により、市場参加者にシェアされている情報に不均等なゆがみがある場合
投資家には長期投資家だけではなく短期投資家もいます。株価が長期的に上がり続ける確度が高い企業についても、当然、短期で利益を確保する人たちがいるのです。こうしたこともまた、株価形成に影響を与えます。特に最近は、ハイ・フリークエンシー・トレーディングと呼ばれる高頻度の取引が広まり、実態価値と関係ない短期的なサヤ取りの売買が、これまで以上に目立ちます。

②制度、法律、商習慣の違いなどが企業の実態価値の評価をゆがめている場合
例えば、パッシブ投資とアクティブ投資の事例を考えてみましょう。パッシブ投資とは、対象企業の分析なくTOPIX(東証株価指数)などの指数と同じ値動きになるように投資することです。そのため、良い企業も悪い企業も関係なく投資対象となります。となると、パッシブ投資が増えれば、当然、実態価値と価格の相対的価値のゆがみが拡大していきます。つまり、差が生じる企業が出てくるわけです。

③市場参加者の投資行動が支配的バイアスに極端に影響を受けている場合
これは、相場格言「悲観で買い楽観で売る」の世界です。まさしくグレアムさんやバフェットさんが言っていることです(第1部参照)。リーマンショックのような経済危機が発生したときや新型コロナウイルスの感染が拡大し始めたときのように、相場全体が悲観論に染まってしまうことはしばしば起こります。

以上のような要因によって、「3つの輪」から見た実態価値が高い企業が、市場では「割安な状態」に置かれていることがあります。そこに裁定機会への参加のチャンスがあるのです。