スパークス・グループ株式会社

18:キャッシュフローの泉を探せ

ビジネスモデルとは

真のビジネスモデルを見極める

現在、日本には約3800社の上場企業があります。ビジネスモデルはまちまち、経営者のタイプもさまざま、そして成長産業にいる会社もあれば、縮小していく衰退産業に見える分野に所属する会社もあります。こんなとき、どういったところから企業を見ていけば良いのでしょうか。
私は、まず「キャッシュフローの泉を探せ」と話します。その企業がどこに「新しい価値を生む泉」を見つけて、具体的にどうやって、どういう組織で利益を生み出しているのかを見極めることが大事だということです。
企業における「キャッシュフローの泉」を探すためには、まず売上高から見ていきます。売上高というのは、数量に単価を掛けたものです。つまり売上高は、どれだけ多くの人がその商品・サービスに魅力を感じて使ってくれているかを示します。
買ってくれる人に効用や満足感を与えていくことが、企業の使命です。どんなにAIが進み、技術が進歩しても、最後は人間と人間の感性、「つながり」が大切です。本当に求められているものを提供できているのか、使う人が本当に満足して「ありがたい」「うれしい」と思っているかを調べることが、その企業が永続的にキャッシュフローを生み出すことができるかどうかという問いに答えるための最初のステップです。
調べていくと、表面的に見えている事業モデルと、実際に安定的な収益を稼いでいるビジネスモデルというのは必ずしも同じではありません。例えば、プリンターやコピー機を販売するメーカーの場合は、どこで利益を得ているのでしょうか。実は、消耗品であるインクによって稼いでいるのです。
また、百貨店などには、商品の販売収入よりもカードのリボ払いによる金利収入で稼いでいるところもあります。取引手数料の安さを謳うインターネット証券が、信用取引の金利収入を収益の核としている場合もあります。

投資家には企業家精神が必要

多くの企業家は、「これこそが消費者が求めているにもかかわらず、満たされていない潜在的ニーズだ」という仮説を立てて、または新しい効用を生み出すビジネスモデルを組み立てて、試行錯誤を繰り返し、製品やサービスを作り出しています。
そういったプロセスに私たち投資家も企業家マインドを持って入り込んでいきます。企業家の気持ちを共有して入り込んでいくということがとても重要です。スパークスの投資がユニークであり続けてきた1つの理由は、企業のオーナーのような気持ちで投資することを徹底してきたからです。企業のオーナーとは、まさにそういった
気持ちで経営を見ているのです。
私は今、投資家としてより強く持たなければいけないプリンシプル(原則)は、「Entrepreneurial Investment(企業家の視点を持った投資)」であると思っています。私たち投資家が企業家としてのマインド、視点を投資対象となる企業の経営者と共有し、それぞれの立ち位置で、その企業を育てていくという姿勢が望まれると思います。
新しい価値を生み出すことを企業家と一緒に同じ目線で考えることができる投資家にならなければ、これから出てくるであろう新しい効用に対する気づきを企業家と共有することはできません。
例えば、メルカリのような会社は、インターネット時代のテクノロジーが可能にした新しい道具をテコに、新しい効用を市場に提供しているわけです。そういった企業の価値に気づくためには、今の社会を現場でしっかり観察することが出発点であると思います。そこに新しい「キャッシュフローの泉」、つまり企業が生み出す価値の源
泉を企業家マインドで見つけ出す努力をすることが大切なのです。