スパークス・グループ株式会社

17:その会社にはハイヤーパーパスがあるか?

企業のビジョン

社会の問題や変化を機会(オポチュニティー)に変える

「組織」の存在理由について、ドラッカーさんは「社会の問題や変化を機会(オポチュニティー)に変えることだ」と言っています。人々が解決したいと考えている問題に取り組んだり、その変化によって生まれる新しい需要を開拓したりすることが、組織の存在理由だということです。つまり、「誰かのために何かをしたい」ということがないといけない。「それは企業のマネジメントにとってものすごく大きな挑戦であるけれど、ビジネスの機会の源泉でもある」とドラッカーは説いています。
そういう高い目的、つまりハイヤーパーパスを持っているかどうか。それは企業を見るときの重要なポイントです。つまり企業活動を通じて、最終的に何をしたいのか、社会に何をもたらしたいのかということが非常に重要です。ハイヤーパーパスのない会社は、一時的に儲かって成長することはあっても、長い目で見ると社会の中に
オポチュニティーを見いだすことができなくなっていくでしょう。

豊田佐吉が開発した「自働織機」から受け継がれるトヨタの精神

トヨタ自動車は、豊田佐吉が開発した自動織機を源流とします。豊田佐吉が開発した自動織機は「自働」(「動」に人偏が付いている)という独自性がありました。その「自働織機」は、人間の代わりになる、人間の意志を持った機械だったのです。
それまでの自動織機は、糸が切れたら、人が織機を止めていました。止めないと、そのまま不良品を生産し続けることになってしまいます。織機を止めて、糸巻機から糸を吸い込んで、また織機に通すという作業を人がやっていたのです。だから織機の稼働状態をずっと見ている必要があり、1台の織機に1人の労働者が張り付いていました。
豊田佐吉が開発した「自働織機」は、糸が切れたら自動的に止まる仕組みになっていました。糸が切れたら自動的に止まって、待っていてくれる。止まっている織機があったら、糸を通しにいけばいい。だから1人で何台もの織機を見ることができるようになりました。佐吉はさらに、糸を通すときに糸くずを吸い込んで胸を患う人が少なくなるような仕組みも作ったのです。
豊田佐吉の教えはトヨタ自動車に受け継がれています。トヨタが良い会社であり続けている理由の根底には、まさしくハイヤーパーパスがあるのです。

従業員を同じ方向に向けるモチベーションになる

「社会に貢献したい」と言う人はたくさんいますが、本当にそう思って、本当に実行することは簡単ではないと思います。利益を上げて、ユニコーンになって、少し金持ちになって、ということが目標では、企業は続きません。その上にある目的、ハイヤーパーパスに共感してくれる人が集まらないと、企業は続きません。
企業は求心力を持ち続けることが大切です。従業員が同じ方向を向いてモチベーションを維持するには、共感できる目的が必要です。共感の中心となるのがハイヤーパーパスなのです。多くの人が賛同してくれるハイヤーパーパスがあるかどうか。それは良い企業の条件の1つでしょう。