スパークス・グループ株式会社

16:「新しい地図を作っていく会社」を探す

顧客の視点

イノベーションとマーケティング

新しい市場に新しいビジネスモデルで挑んでいく企業は「新しい地図を作っていく会社」と言えます。
大航海時代に大西洋を渡った冒険者たちは、海の向こうの正確な地図を持って出発したわけではありません。「海の向こうに資源があるに違いない」と思って、未知なる世界に向かって船出したのです。それでアメリカに行ってみたら当時は資源が見つからなくて、奴隷船が行き来するだけだったわけですが、それによって新しい地図が
できてくる。アメリカという新大陸が開拓されていくとともに、新しい地図ができたわけです。
ドラッカーさんは、「企業の仕事は、社会の問題を解決し、顧客を作ること」と言い、そのために必要なことを2つ挙げています。1つはイノベーションです。もう1つはマーケティングです。マーケティングとは、簡単に言うと、需要を創造することです。
ドラッカーさんが例に挙げたのはゼロックスです。ゼロックスはコピー機を開発して売り出したのですが、それまで存在しなかったコピー機を何にどう使うかということを知っている利用者はいませんでした。そこでゼロックスは使い方を教えることから始めて、コピー機の顧客を創造した。新しい市場を切り開いたのです。まさに新しい地図を作ったわけです。
アップルやユニクロも新しい地図を作った会社と言えるでしょう。そういう本当に良い会社を見つけて投資するということは、投資家にとって「キャッシュフローの泉」を見つけたことを意味します。

優秀なアナリストが見ていること

私の友達にジョージ・トモルキーという人がいます。トモルキーさんは私が野村證券の社員としてニューヨークで働いていた頃、フィディリティで優秀なアナリストとして活躍していました。
10数年前、彼は私にアップルの話をしてくれました。
「アップルは良い会社だ。なぜかというと、私の子供たちがみんなアップルの製品が好きでヘビーユーザーだから」
彼のような一流のアナリストは、日常のことをよく観察しています。そこに投資の要諦があるからです。企業の将来価値というのは、最終的にはその企業の製品やサービスが、消費者にどのように受け入れられるかで決まります。だからユーザーがその企業の製品やサービスをどう評価しているかを感知することが大事なのです。
私も日本の企業を見るときは、可能であれば、必ず自分で体験するようにしてきました。例えば回転ずしが登場したときにはすぐに食べに行きました。消費者向けの製品なら買って使ってみるようにしていました。
みなさんも「新しい地図を作る会社」を見つけたと思ったら、その会社の製品やサービスを自分で使ってみてください。