スパークス・グループ株式会社

15:「3つの輪」の中に入る会社を探す

会社の評価基準

スパークスが実践していること

バフェットさん、グレアムさん、フィッシャーさんなどのレジェンドが教えるように、投資で成功するための王道は「良い企業を安く買う」ことです。そこでスパークスでは、以下の3つのポイントを徹底します。
①良い企業、かつ安い企業を探す
②なぜ安いのかを考える
③株価が正常化する裁定プロセスのためのカタリストを言語化する
この3つのポイントを押さえるためにスパークスが実践していることを中心に、投資で成功する実践的な考え方を解説しましょう。
まずは「良い会社を探す」ことです。
バフェットさんが言うように、本当に良い会社は少ししかないと思います。では、その少ない会社を見つけるには、どうしたらいいか。
私は基本的な視点として「3つの輪」を挙げています。「3つの輪」に入る会社を見つけようというのは、私が創業のときから言っていることです。

経営者は誠実か?

1つ目の輪は、クオリティ・オブ・マネジメント。経営者の質です。経営者にはいろいろな資質が必要だと思いますが、大きくまとめると2つの点が重要だと思います。
まずは、誠実であることです。それはグレアムさんもフィッシャーさんもバフェットさんも異口同音に「経営者が誠実か」という点の重要性を説いています。投資の世界のレジェンドがみんな「経営者が重要」と言っていることが重要です。やっぱり最後は経営者なのです。
「うーん」と首をひねりたくなるような経営者でも、短期的に大きく稼ぐこともあります。しかし時間軸を伸ばしていくと、化けの皮がはがれていく。やっぱり経営者の誠実さというのは、その企業の将来を決める最も重要なことです。その企業の競争力を知る上で重要だと思います。
それから、私がいろいろな経営者を見てきて言えることは、戦略的な指導力があるかどうかが重要だということです。
例えばユニクロの柳井正さんは、非常に早い時期からAIの技術をベースにした倉庫を作って、Eコマースを強化してきた。それは自分で作ってきた店舗ベースの経営を否定するような経営判断です。
普通の企業の普通の経営者がそういうことを始めようとすると、いろいろな部門の事情が出てきて、実行できなくなってしまいます。しかし柳井さんは実行した。戦略的指導力のあるオーナー経営者だからできたことだと思います。

その市場は成長するか?

2つ目の輪は、グロース・ポテンシャル。その会社のいる場所が成長市場かどうかということです。例えば文明開化が始まった明治時代の初期に、靴と下駄のどちらが有望な商売だったのでしょうか。当時はまだ下駄を履いている人が多かったかもしれません。しかしその後、下駄の需要はどんどん減ってしまった。「次は靴だ」と気づ
いて、靴屋を始めた人は成長した。つまり、同じ技術力を持っていても、その技術でどういう市場に向けた商売を始めるかによって、成長力がまったく違ってきます。
100年前のロンドンを撮影したある写真を見たら、街並みを走る乗り物はみんな馬車でした。ところが、その15
年後くらいの同じ場所の写真では、街を走る乗り物は自動車になっていました。企業努力で馬車をきわめても、自動車の時代の到来という大きな波には勝てなかったのです。
ただし、成長する市場には参入する企業が増えるので、競争が激しくなります。だからそれを乗り越える経営者の力量とビジネスモデルが必要になります。

ビジネスモデルが優れているか?

3つ目の輪は、クオリティ・オブ・アーニングス。収益の質です。これはビジネスモデルが優れているかどうかです。
再びユニクロを例に取ると、柳井さんのすごいところは、自分たちの商売を「製造業」と捉えてビジネスモデルを作ったことです。
柳井さんがユニクロを始めた頃、アメリカを参考にして日本でカジュアルウェアの商売を始めた企業はたくさんありました。カジュアルウェアでの成功を目指した人はみんな、自分たちの商売は「小売業」だと思っていた。小売業者として、アメリカンカジュアルという新たに生まれる市場に参加したたわけです。ところが柳井さんは、「製造業」としてユニクロを始めた。自分たちでデザインして、開発して、作って、売る。そういう「製造小売業」としてのビジネスモデルを作った。「ファッション製造業」というビジネスモデルを作り上げたことがユニクロのすごさです。
ユニクロのように、有望な市場を見つけて、競争力のあるビジネスモデルを作り上げるということは、「キャッシュフローの泉」(コラム「キャッシュフローの泉を探せ」参照)を掘り当てて、それを貨幣に置き換えていく仕組みを構築することを意味します。そういう企業は継続してキャッシュフローを生み出していくことができるわけです。つまりビジネスモデルは、株価を支えるキャッシュフローに直結しています。
これはフィッシャーさんが言っていることと重なります。ビジネスモデルがきちんとしていると、将来が見えやすくなる。長期的な観点で未来が予想できて、ブレが少ない。それが「収益の質」の高さです。