スパークス・グループ株式会社

06:賢明なる投資家は現実主義者でなければならない  ベンジャミン・グレアム

マーケット変動への対処法

グレアムさんは「将来予測は非常に難しい」と指摘し、「ずっと保有していくだけの確実なキャッシュフローを生み出すかどうか」の分析を提唱したわけですが、彼は株式投資で成功するために必要なこととして「感情のコントロール」も挙げています。欲と恐怖を規律でコントロールできなければいけないというわけです。

「相場とは、楽観主義と悲観主義の間を行き来する振り子のようなもの」

グレアムさんは「相場とは、楽観主義と悲観主義の間を行ったり来たりする振り子のようなものだ」と言いました。楽観主義が支配する相場は上がり、悲観主義が支配する相場は下がり、それは「知的フレームワーク」に照らせば、「高くなりすぎ」「安くなりすぎ」という状況を生じさせます。
そしてグレアムさんは「賢明な投資家とは、楽観主義者に売り、悲観主義者から買う、現実主義者だ」と説いています。つまり、欲と恐怖の間で揺れ動く振り子をよく見ながら、相場が欲に振れすぎたら欲にまみれている人に売ってやり、相場が恐怖に振れすぎたら恐怖でおびえている人から買ってやる。自分の欲と恐怖をコントロールして、知的フレームワークによって判断できる人が「賢明な投資家だ」というわけです。これはグレアムさんが言っていることの核心です。
このグレアムさんの言ったことは、バフェットさんもよく言っています。マーケットは大きく変動し、楽観主義になったり、悲観主義になったりします。しかし、グレアムさんの言う現実をしっかり軸足に持っていれば、それに対して株価が上に行ったり下に行ったりしても、動揺しないでいられる。「株価が上がった」と喜んでもっと買いに行くとか、「株価が下がってしまった」と悲しんで投げ売りして損を出すということではなくて、みんなが喜んでいるときに売って、みんなが悲しんでいるときにニコニコして買いに行くのが投資で儲ける方法だとバフェットさんは言っています。

マーケットは企業を映す鏡だが、ゆがんでいることもある

マーケットは企業を映す鏡だと言われますが、実はそんなにちゃんとした鏡ではありません。ゆがんでいるかもしれないのです。あるときは凸面鏡になり、あるときはマーケットは企業を映す鏡だが、ゆがんでいることもある凹面鏡になる。いつも正しい姿を映しているわけではありません。そのゆがんだ鏡を利用できるか利用できないか。それは投資家として成功するかどうかの分かれ目だと思います。
本当にマーケットが企業を映す鏡だとしたら、そんなに毎日変動するでしょうか。
企業の価値がそんなにしょっちゅう変動することはないはずです。それなのに株価は毎日動きます。その中で、動かない部分と動く部分があって、動かない本来的な部分はどこで、尾ひれの部分はどこなのかということを考えることが大事なのです。
マーケットという鏡には、悲観的な鏡と楽観的な鏡があって、企業の価値がすごく大きく見えることもあれば、すごく小さく見えることもある。小さく見えるときに、「この鏡はおかしいよね。安すぎるんじゃないか」と考えて買えばいいし、「鏡のせいで大きく見えすぎている」と思ったら無理して買わない。それがグレアムさんの言う
「現実主義者」としての態度です。
グレアムさんは「現実主義者であるためには、過ちを犯すリスクを排除できないということを知っていなければならない」とも言っています。そして常に、過ちを犯すリスクを前提に安全余裕率を株価に組み込まなければいけないと説いています。
つまり、自分は現実主義者として「この株は100円だ」と思うけれど、仮にそれが間違っていても、90円分は間違えようのない実体で担保されている必要があるというわけです。担保に値する実態とは土地や現金などです。
人間は必ず過ちを犯すという現実主義者の知恵です。バフェットさんは、自分がグレアムさんから学んだ一番大きいことは、このことだと言っています。