スパークス・グループ株式会社

05:投資の成功に必要なのは「知的フレームワーク」である  ベンジャミン・グレアム

株式分析の原点

ずば抜けた知的能力も洞察力も内部情報も必要ない

グレアムさんは、投資で成功するためには、ずば抜けた知的能力は必要ないと言っています。人並外れた洞察力も、企業の内部情報も必要ないと言っています。
その代わりにグレアムさんが必要性を説いたのは「適切な知的フレームワーク」です。知的フレームワークとは何かというと、簡単に言うと、株式を債券と同じように評価する考え方です。
債券というのは、額面100円に対してクーポン(金利)が年5円というように決まっていて、償還されるまでクーポンを受け取ることができます。そして債券の信用力が高ければ、投資家は額面の100円に近い価格で買ってくれる。その場合、利回りが約5%ということになります。しかし信用力が低い債券は、額面が100円でも90円に値下げしないと買ってもらえなかったりします。いわゆるジャンク債です。しかし値段が安いので利回りは高くなります。
グレアムさんは、株式もそのような債券のクーポンと同じように見て評価しなければいけないと言ったわけです。そして債券のクーポンに相当するものとして、企業が生み出すキャッシュフローをベースに株式を評価する方法を提唱しました。
企業が生み出すキャッシュフローを債券のクーポンの同等物と考えて、キャッシュフローを生み出す仕組みや確実性を見る。どういう仕組みでキャッシュフローを生み出しているのか、将来にわたってそれがどのくらい確実なものなのかを分析する。それがグレアムさんの提唱した証券分析法です。
つまり、グレアムさんが言ったのは、高いIQも、特別な洞察力も、企業の内部情報もいらないけれど、債券の利回り計算のような常識的な考え方を理解していることが必要だということです。それが知的フレームワークです。債券投資との比較で株式投資のフレームワークを確立したのです。
この考え方は、仮に株式市場がなくて、株を売ることができない場合でも、その株を保有し続ける価値があるかどうかを見極めるということを意味します。つまり、将来にわたって確実なキャッシュフローがあるかどうかを分析するわけです。

グレアムさんの本を読んで「震えが止まらなかった」

バフェットさんは初めてグレアムさんの本を読んだとき「震えが止まらなかった」と言っています。その当時バフェットさんはネブラスカ大学に通っていましたが、すぐにニューヨークのコロンビア大学の大学院に通うことにした。そしてグレアムさんの生徒になり、しばらくは彼の会社にも勤めていました。グレアムさんの教えを学んだバフェットさんの投資法というのは、まさに「相場はいらない」「会社が生み出す価値の分配に参加する」というものです。会社が発行する債券に投資しているようなつもりなのです。
グレアムさんが言ったことは、今ではあまりにも当たり前で、PBR(株価純資産倍率)を見るとか、キャッシュフローを見るとかいうことに対しては「それだけじゃ儲からない」「今じゃ通用しない」と言われがちです。「財務諸表を見たって、上がる株かどうかはわからない」と。特にバブルのような上げ相場が来ると、「財務諸表の分析より、次のテーマを見つけたほうが早い」などと言われます。
でも、そうではありません。やはり株式投資の基本はグレアムさんが言ったところにあります。グレアムさんはきわめて普遍的なことを提示したのです。だからこそ、85%はグレアムさんでできているバフェットさんは大成功を続けているのです。