スパークス・グループ株式会社

02:高いROEを維持できる会社を探す  ウォーレン・バフェット

複利の投資効果

バフェットさんが保有する銘柄の特徴

バフェットさんが企業を見るときの大事なポイントとして挙げているものの1つにROE(自己資本利益率)があります。
企業の収益性を測る利益率にはいくつか種類がありますが、投資に最も関連するのがROEです。ROEは、株主が投資した資本を元手にして、どれだけの利益を稼げているかを示す指標です。純利益を自己資本(純資産)で割って算出されます。バフェットさんは常々ROEを重視すると言っています。
バフェットさんの投資先として一番有名なコカ・コーラについて見てみましょう。
バフェットさんがコカ・コーラ株を取得した1988年時点のROEは34 .3%です。この時点でかなり高いROEといえます。そしてバフェットさんが買い増しを行った1989年と1994年の時点のROEはそれぞれ
38.5%と55.3%であり、1995年にはなんと67.2%をたたき出しています。その後、2012年をピークに売上高は減少傾向にあり、ROEは低下しつつありますが、それでも2018年3月時点で29.83%という高水準を維持しています。
バフェットさんの保有銘柄には、コカ・コーラのように20%程度の高いROEを長期的に維持する企業が多くみられます。
なぜROEが重要なのでしょうか。そこには2つの意味があります。1つは投資効率、もう1つは複利効果です。

投資効率

まずは投資効率です。企業が社会の中でどれだけの収益力や競争力を持っているのか、客観的に見るためには売上高だけでは判断できません。資金をジャブジャブとつぎ込んで、そこそこの利益を上げたとしても、得るものが少ないのは当然です。
同じ10億円を儲けるのでも、100億円の資本を使って10億円儲けるのと、50億円の資本を使って10億円儲けるのは同じではありません。できるだけ少ない資金で大きな利益が上げられる企業こそが、本当に儲けている企業といえるのです。
限られたお金でうまく儲けられる仕組みがあるかどうか。つまり資本に対する効率性が高いかどうか。それを示すのがROEです。

複利効果

そして複利効果が働くかどうかも重要です。ある企業のROEが高くても、それが一時的なもので終わってしまうと、企業価値の長期的な上昇は期待しにくくなります。逆に、高いROEを維持していると、それが複利効果として働き、企業価値の持続的な上昇につながります。
ちょっと計算してみましょう。3つ会社があって、1社はROE15%を維持、1社はROE10%を維持、1社はROEが10%から毎年1%ポイントずつ低下するとしましょう。その3社の10年間の自己資本の成長は、以下の通りになります。

● ROE15%を維持する会社
1.15×1.15×1.15×1.15×1.15×1.15×1.15×1.15×1.15×1.15=4.04
自己資本は約4倍に

● ROE10%を維持する会社
1.1×1.1×1.1×1.1×1.1×1.1×1.1×1.1×1.1×1.1=2.59
自己資本は約2・5倍に

● ROEが10%から毎年1%ポイントずつ低下する会社
1.10×1.09×1.08×1.07×1.06×1.05×1.04×1.03×1.02×1.01=1.70
自己資本は約1・7倍に

このようにROEの水準によって、長期的な成長の度合いがまったく違ってきます。一時的なROEの高さではなくて、ROEの高さをキープすることによって、複利効果が最大限に発揮されるわけです。
ROEのレベルをキープするには、収益力を上げることが一番ですが、計算式の分母にあたる自己資本が過大になりすぎないように、自社株買いなどでコントロールして、ROEを長期的に維持できるかどうかということも、投資家にとって大事です。
バフェットさんは、ROEの高さを維持できるかどうかをしっかり見極めます。コカ・コーラやアップルはまさしくそういう企業でした。高いROEの複利効果によってどんどん成長する。それができる企業かどうかを考えているのです。
一般的には、企業の成長とともに、資本効率はだんだん低下してしまうことが多いわけです。なぜなら、儲かるビジネスがあったとしても、その成長には限界があり、また競争も激しくなるからです。ある年のROEが20%、
30%という企業があったとしても、それを維持するのは容易ではありません。
別の言い方をすると、10億円で10%儲かるビジネスに比べて、100億円で10%儲かるビジネスを探すのは難しいわけです。でも、バフェットさんは、成長してもROEのレベルを維持できそうな会社を見極めて投資します。