スパークス・グループ株式会社

25:異常なことが起きているときに何を調べるか?

異常時の行動

「株価は欲と恐怖の間を揺れ動く振り子のようなもの」とグレアムさんが言った通り(※コラム「賢明なる投資家は現実主義者でなければならない」参照)、株価は急に大きく上昇したり下落したりして、投資家を混乱させます。
異常とも思える価格変動が起きているときの行動こそ、投資で成功するための重要なポイントです。ソロスさんが日本のバブルを見抜いて大儲けしたような冷静な判断を下すことができれば、投資家としての成功は近づいてくることでしょう。

キャッシュフローがどうなるのか?

まず必要なことは、何を異常だと思うかという感性でしょう。感性というと天性の才能のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。グレアムさんが言うように、投資で成功するためには、特別な知的能力も洞察力も内部情報も必要なく、「知的フレームワーク」に照らせばおおよその判断はできるのです。
そして異常ではないかと感知したときにやるべきことは、株式の価値が何にサポートされているかを考えることです。そのときに一番大事なのはキャッシュフローだということは、グレアムさんが教えるとおりです。
グレアムさんの理論が教えるように、株式投資における価格というのは、キャッシュフローの関数です。企業が生み出すキャッシュフローがどのくらいあって、それがどれだけ続くのかということが株式の価値を決めるわけです。その考え方に従えば、例えばビットコインの値上がりは明らかに異常です。なぜならビットコインはキャッシュフローを生まないからです。だからビットコインの価格上昇はどこかで破綻するはずです。異常なこととはそういう状態のことを指すというのが私の考えです。
ビットコインのようにキャッシュフローを生まないものへの投資は、言ってみれば「好きか嫌いか」の判断になるでしょう。キャッシュフローを生まない投資対象でも、それを好きな人の投資によって値上がりすることはあります。例えば17世紀のオランダで発生したチューリップのバブルなどはその典型でしょう。ビットコインはそれと同じなのではないかと思って、考えてみることが大事なのです。

金融や財政の政策がどうなるか?

株式の場合、価格に大きな変動を生じさせる要因として挙げられるものに、金融や財政の政策があります。それを理解するには、金融や財政のキーマンが言っていることを理解する素養が必要かもしれません。でも、プロのような知識はなくても判断はつくと思います。
例えば、コロナ禍で世界的に需要が急減し、レストランなどからお客さんがいなくなっていることは誰でもわかります。過去にもバブル崩壊やリーマンショックなどいろいろな危機がありましたが、その多くは金融の危機でした。しかしコロナ禍は社会を構成する普通の人の売り上げがなくなってしまった。
そういう場合は政治が動かざるを得ない。政治家にできることは2つ。財政と金融の政策を動かすことです。選挙に有利にするためには、お金を使う、金利を下げる。世界中でそれが起きています。
その結果、「何か異常なことが起こらないか」と考えていくことが大事です。それには特別な知識は必要ありません。価格を見て、ちょっと調べて考えればいいのです。

10年、20年、30年という時間軸で「どっちに振れているか?」を考える

繰り返しになりますが、株価は欲と恐怖の間を揺れ動く振り子のようなものです。
その振り子がどちら側に振れているかを考えるようにしましょう。株価が上がっているときだけでなく、株価が下がっているときも、そういう冷静な行動が欠かせません。恐怖が楽観を凌駕してしまいそうな状況になったとき、その恐怖は実態を正しく評価しているかを調べるのです。
10年、20年、30年という時間軸で考えると、今の株価はどちら側に振れているのかと考える。バフェットさんは30年くらいの時間軸で考えて、とんでもない富を築いたわけです。

普通に考えたほうが長い目で見ると正しいことが多い

異常なことが起きていても、それを異常と思わなくなってしまうこともあります。
例えば日本の株式市場では、アベノミクス前にはすごく安い株価をつけている銘柄がたくさんありました。証券会社のアナリストは「こういう理由で安いんです」と理屈をつけていたのです。しかし常識で考えて安すぎる銘柄は、その後、修正されて値上がりしました。逆に、高すぎるのを異常と気づかず、値下がりすることもあります。そのように、常識から外れたものは、いつか修正されます。
やはり常識で考えることが大切です。証券アナリストやファンドマネージャーの理屈で考えたことが正しいと決めつけず、普通の生活者の視点で普通に考えてみることが大事なのです。専門家は、専門的なことばかりしていると、いつのまにか常識から外れた理屈を作ってしまいます。
異常なときには、普通に考えたほうが、株式市場を長い目で見ると正しいことが多いのです。もちろん、ビットコインも「新しい地図」(※コラム「「新しい地図を作っていく会社」を探す」参照)を作っているのであれば、価格の上昇を正当化できるかもしれません。
ただ、新しい地図を作る会社は確率としてはものすごく少ないので、まずは常識で考えてみることが大事でしょう。

経済は「その他大勢」がどう思うかの集約

バフェットさんは、コーラが好きで「美味しい」と思って飲んでいて、それがコカ・コーラへの投資につながったわけです。その会社の製品やサービスが良いと思えるかどうかという、すごくシンプルなところからスタートしています。
経済は、「その他大勢」の専門家でない人がどう思うかの集約です。だからこそ「常識で考える」ことを忘れてはいけません。