スパークス・グループ株式会社

TCFD提言への取り組み

スパークス・グループ(以下、「当社」といい、グループ会社を含めて「当社グループ」と総称します)は、投資を通じて地球環境と人間が共生できる社会の実現に積極的に関わることを目指し、2020年1月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が公表した提言に賛同の意を表明しました。
2024年3月期におけるTCFD提言への取組状況について、TCFDが開示を推奨する、気候変動に関するリスク及び機会に係る「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に沿って、以下ご報告します。

ガバナンス

当社グループでは、「サステナビリティに関する基本方針」を策定し、気候変動を含むサステナビリティに係る課題への対応を経営上の最重要課題の1つと認識しています。よって、気候関連の課題に関する基本方針に関しては、当社取締役会において議論・決議を行い、具体的な業務の執行にあたっては、その中心的な意思決定機関である当社経営会議において、少なくとも年に1回、かつ、必要に応じ適時に、具体的な活動方針や推進施策等を議論・決定し、取締役会に報告することで実施内容を取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。
当社取締役会は、その過半数が社外取締役から構成されており、具体的な活動方針や推進施策等に対し、進捗状況の検証や審議等を実施することにより、PDCAサイクルによって、適切にマネジメントを推進し、継続的に改善を図っています。また当社経営会議には、業務執行の中心メンバーである社内取締役及びグループ執行役員が全員参加し、少なくとも毎月1度は開催され、その内容については適時に取締役会に報告されます。なお、経営会議におけるサステナビリティ経営に関する議論を具体的に進めるため、サステナビリティ企画室を設置しています。

ガバナンス体制図

戦略

当社グループは、顧客資産を中長期にわたり運用していくために、持続可能性のある生態系全体を含めた地球環境の維持は必須と認識しております。特に、気候変動問題は、この目的達成のための重要課題であると捉えています。
気候変動は平均気温上昇による自然災害の激甚化や脱炭素社会の移行に伴う社会経済の変化をもたらすことから、これらに関連したリスクと機会が生じます。
リスクには、自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる急性リスクや平均気温上昇に伴い発生する慢性リスクといった「物理的リスク」と、脱炭素化に向けた規制強化や脱炭素技術移行への対応といった「移行リスク」の2つがあります。
機会には、気候変動問題の解決のための技術革新や市場の変化等に伴う企業の収益機会があります。当社グループは、気候変動対策や脱炭素社会への移行を、新しい投資商品の提供を通じてサポート・実現することで当社グループビジネス機会の拡大に繋げ、ひいては持続可能な環境・社会の実現に貢献していきます。

当社グループは、TCFDの提言を踏まえ、以下の通り、リスク(物理的リスク、移行リスク)及び機会について、短期・中期・長期の目線での把握に努めています。投資会社である当社グループへの直接的な影響としては、他の業種に比べて大きくないものと考えていますが、今後は、これらの想定を、複数のシナリオ分析等によって検証し、より具体的な財務的な影響等を把握するよう努めていきます。なお、大規模な自然災害といった物理的リスクについては、自社の事業の継続性を確保するための定期的なBCPの見直しや管理体制の強化を図っています。

気候関連のリスク

リスクの種類 リスクの内容 想定される主な影響 想定期間
移行
リスク
政策・
法規制
  • GHG排出価格 (炭素税) の上昇
  • 排出量の報告義務の強化 など
  • 制度変更や規制強化に伴うコスト増加による業績への悪影響
中期~長期
技術
  • 急速な技術革新による産業構造の変化への対応の遅れ など
  • 産業構造の変化をとらえた新たな投資商品を提供する機会を逸することによる結果的な業績への悪影響
中期~長期
市場
  • 投資家の嗜好変化 など
  • 投資家の嗜好が変化することに対して、適切な投資商品を提供する機会を逸することによる結果的な業績への悪影響
中期~長期
評判
  • 気候変動対策への取組み不足によるレピュテーショナルリスクの増加 など
  • 評判悪化によるビジネス機会の減少による業績への悪影響
  • 評判悪化による当社の資金調達コスト増
短期~中期
物理的
リスク
急性/慢性
  • 豪雨・巨大台風などの災害増加
  • 平均気温の上昇、海水面の上昇等による災害の激甚化 など
  • 当社グループの拠点や社員の被災などによる事業活動の制約による業績への悪影響
  • 災害への対策や復旧・修繕対応など各種コストの増加による業績への悪影響
中期~長期
  • 【想定期間】短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年

気候関連の機会

上記気候関連のリスクへの対応策を検討する際には、例えば「急速な技術革新による産業構造の変化への対応の遅れ」を「産業構造の変化を急速にもたらす技術を有する会社に投資機会を見出し、投資戦略に落とし込んでいく」など事業機会に捉え直すことで、投資戦略の立案に繋げています。

リスク管理

当社グループは、リスク管理の基本的事項を定めることにより、想定し得る個々のリスクを予め把握し、適切に管理することで、当社グループの保有するリスクを全体的に管理し、もって当社グループの健全性・適正性の確保に資することを目的として、グループリスク管理基本規程を制定しています。
また、当社取締役会は、当社及び当社グループのリスク管理に係る事項を検討、審議することを目的として、グループリスク管理委員会を設置しています。グループリスク管理委員会は、業務執行の中心メンバーである社内取締役及びグループ執行役員が全員参加のもと、原則として四半期に1度開催されます。グループリスク管理委員会においては、グループリスク管理基本規程に定めるリスク管理プロセスに沿って、重要な顕在化事象に加え、想定し得る潜在的なリスクを把握し、リスクの把握・評価、リスク対応策の設定、リスク対応状況のモニタリングなどを実施しています。
また、グループリスク管理委員会の内容は、適時に取締役会に報告されます。取締役会は、その過半数が社外取締役から構成されており、リスクの所在・種類、対応策及びその実施状況、並びにリスク管理の状況について監督することで、当社グループを取り巻く経営環境や当社グループの経営戦略に鑑みて、適切なリスク管理態勢を確立し、継続的に改善を図っています。

なお現在、気候関連リスクは、グループリスク管理基本規程において設定、管理するリスク区分としてではなく、それらリスク区分に横断的に影響を及ぼす要因と捉えて管理しています。今後も気候変動問題のリスク管理態勢について、継続的に改善・強化を検討・実行していきます。

指標と目標

当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、脱炭素に向けた取り組みを進めており、気候関連に関するリスクの軽減や機会の実現を目的に、指標を定め、目標を設定し、そのモニタリングに取り組んでいます。これらの指標の進捗状況については、少なくとも年に1回かつ必要に応じ、当社経営会議及び当社取締役会に報告されます。
2023年度の当社グループの事業活動により、自らが排出する温室効果ガス(以下、「GHG」)排出量のうち、 Scope1・Scope2の合計※1は、約80.96 tCO2eであり、2020年度基準比▲43.0%でした。2022年9月より、GHG排出量削減に向けた取り組みの一環として、グループ国内拠点6社が入居するビルで使用する電力に関し、非化石証書を用いた再生可能エネルギー由来の電力契約に変更したため、削減実績が増加しました。中間目標として掲げた2030年度までにGHG排出量を33%削減(2020年度比)の目標を達成することができましたが、今後も更なるGHG排出量削減に取り組んでいきます。
指標として定めている GHG 排出量に関する実績推移は、以下の通りです。なお、GHG排出量削減目標(Scope1・Scope2)に向けた進捗管理に加え、「環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」等を活用して、サプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)を算定し、モニタリングを継続しております。また、Scope3の開示強化に向けて、特にカテゴリ15の「投融資」の算定に関しては、金融機関として脱炭素社会の実現に向けた第一歩であると認識しております。今後、PCAF※2の手法に基づく投融資を通じたGHG排出量(Financed Emissions)の計測を進めていきます。

Scope1・2 tCO2e

2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
Scope1 (直接排出) 6.05 6.13 6.13 5.30
Scope2 (間接排出)※3 135.93 126.64 103.67 75.66
Scope1・Scope2 合計 141.98 132.77 109.80 80.96
削減実績 (2020年度比) - ▲6.5% ▲22.7% ▲43.0%
削減実績 (前年度比) - ▲6.5% ▲17.3% ▲26.3%

Scope3 tCO2e

カテゴリ 2021年度 2022年度 2023年度
Scope3 カテゴリ1 (購入した製品・サービス) 3.09 2.81 4.23
Scope3 カテゴリ2 (資本財) 9.81 249.23 124.47
Scope3 カテゴリ5 (事業から出る廃棄物) 0.28 0.39 0.36
Scope3 カテゴリ6 (出張) 136.52 576.47 822.59
Scope3 カテゴリ7 (雇用者の通勤) 62.93 51.70 54.36

[ 算定期間 ] 各年度:4月1日~翌年3月31日
[ 算定範囲 ] Scope1・Scope2:東京拠点グループ6社※4、SPARX Asset Management Korea Co., Ltd.※5、SPARX Asia Investment Advisors Limited※5
Scope3:東京拠点グループ6社※4
[ 算定方法 ] Scope3の算定方法、排出計数等は、環境省・経済産業省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.6」「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.4」に基づき算出
カテゴリ1:東京拠点グループ6社のコピー用紙の購入金額に排出原単位を乗じて算出
カテゴリ2:該当年度内、東京拠点グループ6社の固定資産取得額に排出原単位を乗じて算出
カテゴリ5:東京拠点グループ6社の排出廃棄物を種類・処分方法ごとに排出原単位を乗じて算出
カテゴリ6:東京拠点グループ6社の国内外出張金額より算出(航空機、鉄道、バス、タクシーの利用金額ごとに排出原単位を乗じて算出)
カテゴリ7:該当年度末の東京拠点グループ6社の社員の月額通勤費を年額に換算して算出(鉄道、バスの利用金額ごとに排出原単位を乗じて算出)

  • ※1 GHG排出量算定基準は、GHGプロトコルに基づくScope1(直接排出)+Scope2(間接排出)
  • ※2 Partnership for Carbon Accounting Financials
  • ※3 Scope2は、マーケット基準にて算出
  • ※4 東京拠点グループ6社は、以下の通り
    スパークス・グループ株式会社
    スパークス・アセット・マネジメント株式会社
    スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー株式会社
    スパークス・アセット・トラスト&マネジメント株式会社
    スパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメント株式会社
    スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社
  • ※5 所在国の排出係数を使用して算出

当社グループの事業活動に伴うCO2排出量削減

責任投資に係るTCFD提言への取り組み

当社グループ内のアセットマネジメント会社が、受託しているポートフォリオの運用を通じて、投資先の気候変動への対応状況を分析し、影響度を評価する取り組みについては、以下の通りです。

ガバナンス

当社グループは、「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」というパーパスを掲げ、この達成のため、顧客よりお預かりする全ての資産に関する顕在・潜在双方のリスクと機会を適切に把握、管理しています。
具体的には、責任投資の監督責任、説明責任を果たすため、当社取締役会の諮問機関として、グループCIOを委員長とする責任投資委員会を設置しています。なお、責任投資委員会には、全ての社内取締役及びグループ執行役員が委員として参加し、少なくとも四半期に一度は開催され、その内容について適時に取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。また、責任投資委員会における責任投資原則の実践に関する議論を具体的に進めるため、責任投資推進室を設置しています。
当該委員会においては、グループ各社の投資政策委員会(もしくは同等の組織)から、気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資の実施状況の報告が行われるほか、気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資ポリシーなどの変更承認、責任投資の実施に関する年次報告書の承認などを行っています。
なお、当該委員会には外部アドバイザーが陪席し、独立した立場から、報告や審議内容に対する助言がなされ、責任投資に関する最新の動向が共有されています。
2023年度は、責任投資委員会を計4回実施し、各投資政策委員会から、責任投資の実施状況の報告、責任投資方針の見直し、年次報告書が報告され、承認されました。

  • 体制図は、ページ上部の「ガバナンス体制図」を参照

戦略

気候変動問題の解決のためには、投資先企業が気候変動に関するリスクと機会を中長期的な目線で経営戦略に組み込み、対応を進めることが重要であると認識しています。アセットマネージャーとして、投資先企業の気候変動に関するリスクと機会が、顧客資産の運用ポートフォリオに及ぼす影響を把握するため、運用資産残高の大部分を占める、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略※1の、2023年12月末時点のポートフォリオについて、S&PGlobalにシナリオ分析を委託し、実施しました。
なお、2023年12月末時点の、当社グループの投資戦略別運用資産残高は、表の通りです。

[単位:億円]
日本株式 10,936
OneAsia 1,103
実物資産 2,855
プライベート・エクイティ ※2
(未来創生他)
1,681
合計 16,576

2℃未満目標との整合性:温室効果ガス移行経路評価

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオとベンチマーク※3について、移行経路アプローチに基づき温暖化対策のための国際目標との整合性を評価しました。S&P Globalの温室効果ガス移行経路評価を利用することで、ポートフォリオにおける2℃未満目標に対する整合性の程度を把握することができます。

  • ※1 【上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略】は、表中の「日本株式」と「OneAsia」の合計です。
  • ※2 【プライベート・エクイティ投資戦略(未来創生ファンド)】は、表中の「プライベート・エクイティ」のうち、1,193億円です。
  • ※3 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のベンチマークは、TOPIX、KOSPI、MSCI Asia除く日本、を対応する市場の運用資産残高で加重平均し合成しています。

本評価では、過去の実績と将来(中期)の予想排出量の双方を評価対象とし、投資先の時間経過に伴う排出削減が温暖化防止目標に沿った適正な水準にあるかどうかを検証します。その結果、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオでは、昨年に引き続き、2℃以上3℃未満の水準、ベンチマークについては3℃以上の水準にあるとの評価※4になりました。今後、ポートフォリオを2℃未満に整合させることも視野に当社グループとして何ができるかを社内で検討していきます。

  • ※4 昨年の分析では、1.75℃未満の水準でしたが、データカバー率がポートフォリオについては約25%、ベンチマークについては56%と、すべての持ち分について評価できませんでした。一方、本年の分析では 、ポートフォリオについては約95%、ベンチマークについては100%と改善が見られ、ポートフォリオの全体像をより反映していると考えます。

移行リスク

TCFDは、気候関連のリスクを移行リスクと物理的リスクの2つに分類しています。移行リスクは脱炭素経済への移行に関連するリスク、物理的リスクは気候変動の物理的影響に関連したリスクです。

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける、気候関連リスクの財務的インパクト(将来のカーボン・プライスが及ぼす財務への影響)を評価しました。
上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける将来負担すると推定される炭素コスト(Unpriced Cost of Carbon : UCC)は、セクター別では素材、および、インダストリアル、地域別では日本の割り当てが高いことから、当該戦略のポートフォリオは、日本国内でのカーボン・コストの上昇をもたらす気候関連の政策変更リスクに最も影響を受けるものと考えられます。投資先企業が将来負担する炭素コストに対して、現時点でどの程度支払う能力があるかを示すEBITDAアット・リスクは、高位シナリオ※5に基づく2030年時点のポートフォリオ加重平均値で約6.80%、一方ベンチマークは約11.44%でした。

2022年 2023年
ポート
フォリオ
ベンチ
マーク
ポート
フォリオ
ベンチ
マーク
EBITDAアット・リスク 19.85% 7.72% 6.80% 11.44%
  • ※5 パリ協定に整合し、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオで、OECDとIEAの調査に基づいています。

セクター別UCCの内訳

国別UCCの内訳

物理的リスク

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける物理的リスクを、2050年時点の中高位シナリオ※6に基づき評価しました。8つのハザードタイプ(山火事、寒波、熱波、水ストレス、海岸洪水、河川洪水、熱帯サイクロン、干ばつ)のうち、エクスポージャースコアが高かったのは、河川洪水でした。また、財務インパクトが大きかったのは熱波でした。

エクスポージャスコアと財務インパクトのグラフ

出所:S&P Globalデータよりスパークスにて作成

  • ※6 2100年までの気温上昇が2.8-4.6℃となるシナリオで、Shared Socioeconomic Pathway(SSP)の3, Representative Concentration Pathway (RCP)の7.0に該当します。エクスポージャースコアは1から100 のスケールで表現され、100が考えうる最大のリスク、1は最小のリスクを示します。財務インパクトは、気候変動に関連して発生する可能性のある損失(設備投資、運用経費、事業中断など)を資産価値に対する割合(%)として表示します。
 

リスク管理

当社グループは、投資先企業の調査・分析及び投資判断において、ボトムアップリサーチによる企業の定性的評価を重視しています。ボトムアップリサーチにおいて、期待投資リターンの評価を行うとともに、ESGに関する機会とリスクも定性的に評価しています。
また、外部ベンダーの気候変動関連データをエンゲージメント先の選定や対話に活かしながら、投資先企業に気候変動に係る取り組みを促進するよう働きかけを行うことが可能な態勢整備を進めています。
なお、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオに関して、外部ベンダーの気候変動関連データを参照し、各ポートフォリオとベンチマーク(もしくは参考インデックス)について、カーボンフットプリント(事業活動に伴って排出される温室効果ガスのCO2換算量)と加重平均カーボンインテンシティ(WACI : Weighted Average Carbon Intensity)を計測した数値と、エンゲージメント件数を投資政策委員会に四半期ごとに報告しています※7。

  • ※7 エンゲージメント件数の投資政策委員会への報告は、2023年1月より開始

指標と目標

当社グループは、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、1企業として、積極的に活動を行う所存です。そして、2050年までにすべての投資先企業、案件が温室効果ガスの排出量についてネット・ゼロを達成することを目標といたします。

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略の2023年12月末時点のポートフォリオに関して、TCFDが開示を推奨しているカーボンフットプリント(事業活動に伴って排出される温室効果ガスのCO2換算量)、加重平均カーボンインテンシティ(WACI : Weighted Average Carbon Intensity)を、以下の通り算出しました。

2022年 2023年
カーボンフットプリント 830,940 tCO2e 451,291 tCO2e
WACI 104 tCO2e/百万米ドル 78 tCO2e/百万米ドル

上記、カーボンフットプリント、WACIのいずれの算出に関し、投資先の開示情報や、使用可能な開示情報がない場合はモデリングによる独自アプローチによりGHG排出量を算出するS&P Globalのデータを使用しています。なお、Scope1及びScope2を対象に算出しています。当社グループの運用資産において、GHG排出量や外部評価機関の評価などは、分析を補完するために積極的に活用する方針ですが、データの信頼性、評価方法の違いがあることから、数値を比較するのではなく、データを継続してモニターし、今後の利用方法を検討しています。

顧客資産の運用のうち、個別戦略の目標

【上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略】

当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、積極的に活動を行う所存です。したがって、2050年までにはすべてのポートフォリオの保有銘柄が温室効果ガスの排出量についてネットニュートラルを達成することを目標といたします。
そのためには、投資先企業が、パリ協定に従い温室効果ガス削減計画を立案し、実行していくことが望ましいと考えます。
ただし、それまでのプロセスとして、すでに排出量が少ない企業、パリ協定に基づき削減施策を実行している企業にだけ投資するのではなく、今後削減施策を実行すると思われる企業を支援することが重要と考えます。
したがって、当面の目標としましては、2025年までには、日本株式投資戦略※8の全てのファンドにおいて、ポートフォリオの50%以上がTCFDに賛同を表明し、排出削減計画を実行している企業とすることとし、なるべく多くの投資先企業が賛同することを働きかけてまいりたいと思います。
今後の目標と実績につきましては以下のとおりです。

  • ※8 上場株式投資戦略および上場株式オルタナティブ投資戦略のうち、日本株式に投資する戦略のこと
目標 実績
2023年 日本株式投資戦略のすべてのファンドにおいてTCFD賛同率30%以上 TCFD賛同率が30%以上のファンド比率(ファンド数ベース)が97%
2025年 日本株式投資戦略のすべてのファンドにおいてTCFD賛同率50%以上 TCFD賛同率が50%以上のファンド比率(ファンド数ベース)が92%

当該投資戦略は、長期的に投資先企業が、パリ協定に従い温室効果ガス削減計画を立案し、実行していくことを、対話により支援してまいります。2023年における主な対話事例を下記にご紹介いたします。
A社は発電関連機器、インフラ設備、航空機器等を手掛ける重工業メーカーです。同社は事業計画の中で、自社グループとバリューチェーン全体を通じて、2040年までのカーボンニュートラル達成を掲げています。自社グループのCO2排出削減について、ヒートポンプや脱炭素電源等を自社工場に導入することにより、事業活動で発生するCO2排出のネット・ゼロを達成することを目指すものとなっています。
A社に対するエンゲージメントの際、2030年までのScope1,2目標に関しては、自社工場への脱炭素電源・省エネ技術導入等が順調に進んでいることを確認しました。課題としては、Scope3で、引き続きその取り組み状況は注視すべき点と認識しています。

【プライベート・エクイティ投資戦略(未来創生ファンド)】

地球環境の持続可能性に関する問題は大きなリスク要因である一方、ベンチャー企業にとってのビジネスチャンスでもあります。当該投資戦略では、例えば、社会全体の効率化・スマート化によるエネルギー消費の抑制、水素の活用など、温室効果ガス排出削減の取組み、資源枯渇を防ぐ糸口となるような新素材の開発など、幅広いテーマから環境問題解決の視点を持ってベンチャー企業を発掘し、投資・支援してまいります。
また、ベンチャー企業自身が環境に与えうる直接的・間接的な影響を把握しコントロールする能力があるか否か、また、環境保全のマインドを持つ経営者か否かを分析します。
当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として積極的に活動を行う所存です。2050年までには、すべての投資先企業が温室効果ガスの排出量についてネット・ゼロを達成することを目標とします。それまでのプロセスとして、当該投資戦略の投資担当者が、投資先企業のTCFD賛同に向けてのガイド役となることを目指します。

当該投資戦略がガイド役として、投資先企業が未上場の段階から気候変動に関する財務情報開示に向けて最大限取り組めるよう、気候関連リスクと機会の評価、そしてその財務上の影響についての議論に参加した主な事例を下記にご紹介いたします。

投資候補先のB社は、金属3Dプリンタを活用した金属部品の製造を行っております。投資検討の過程で、ESGチェックリストを用いて「金属消費量の削減とリサイクル性の最大化」について議論しました。気候変動対策を背景に、一部市場(エレクトロニクス、医療)において金属からリサイクル性の高い材料へ移行する取り組みが強化されることによる事業リスクを認識しました。
エンゲージメントを通じて、同社は他社に先駆けて金属消費を削減する製造プロセスの技術開発や、リサイクル性の高い合金材料に向けた研究開発への投資を行っていることを確認しました。当該投資戦略は、今後も同社技術の開発状況を注視し、モニタリング・対話を継続して参ります。

<コラム>
当社グループは、企業活動や消費行動などの人類の活動が環境にもたらすマイナス面を減らし、プラス面を増やす活動に対して、事業を通じて積極的に関与してまいります。
特に重要課題であるカーボンニュートラルの実現に向けて、ファンドスキームを活用した再生可能エネルギー発電施設の建設・運営等を通して貢献してまいりました。今後も投資運用サービスを通じた地球環境問題への対応を行い、気候変動問題解決に向けた取り組みを一層進め、情報開示を行っていきます。