スパークス・グループ株式会社

TCFD提言への取り組み

スパークス・グループ(以下、「当社グループ」といいます)は、投資を通じて地球環境と人間が共生できる社会の実現に積極的に関わることを目指し、2020年1月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が公表した提言に賛同の意を表明しました。
2022年3月期におけるTCFD提言への取組状況について、TCFDが開示を推奨する、気候変動に関するリスク及び機会に係る「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に沿って、以下ご報告します。
今後も、気候変動問題解決に向けた取り組みを一層進め、情報開示を行っていきます。

ガバナンス

当社グループでは、「サステナビリティに関する基本方針」を策定し、気候変動を含むサステナビリティに係る課題への対応を経営上の最重要課題の1つと認識しています。
気候関連の課題に関しては、取締役会において議論・決議を行っておりますが、業務の執行にあたっては中心的な意思決定機関である経営会議において、少なくとも年に1回、かつ、必要に応じ適時に、具体的な活動方針や推進施策等の議論・決定し、取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。
また、取締役会は、具体的な活動方針や推進施策等に対し、進捗状況の検証や審議等を実施することにより、PDCAサイクルによって、適切にマネジメントを推進し、継続的に改善を図っています。
なお、経営会議には、Cスイート(グループCEO、グループCOO、グループCIO、グループCFO、グループCMO)が全員参加し、少なくとも毎月1度は開催され、その内容については適時に取締役会に報告されます。
また、経営会議におけるサステナビリティ経営に関する議論を具体的に進めるため、サステナビリティ企画室を設置しています。

戦略

当社グループは、顧客資産を中長期にわたり運用していくために、持続可能性のある生態系全体を含めた地球環境の維持は必須と認識しております。特に、気候変動問題は、この目的達成のための重要課題と捉えています。
気候変動は平均気温上昇による自然災害の激甚化や脱炭素社会の移行に伴う社会経済の変化をもたらすことから、これらに関連したリスクと機会が生じます。
機会には、気候変動問題の解決のための技術革新や市場の変化等の企業の収益機会があります。当社グループは、気候変動対策や脱炭素社会への移行をサポートすることが、ビジネス機会の拡大に繋がると認識しています。
リスクには、自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる急性リスクや平均気温上昇に伴い発生する慢性リスクといった物理的リスクと、脱炭素化に向けた規制強化や脱炭素技術移行への対応といった移行リスクの2つがあります。
当社グループでは、大規模な自然災害といった物理的リスクについては、自社の事業の継続性を確保するための、定期的なBCPの見直しや管理体制の強化を図っている一方で、投資先企業が自然災害の被害による影響が当社グループの投資資産の価値に影響するリスクとしても想定しています。また、移行リスクについては、政策や法規制の変化等により、投資先企業が大きな影響を受け、将来的に当社グループの投資資産の価値が毀損するリスクを想定しています。
また、これらの気候変動に関する機会とリスクについて、(1)当社グループの事業活動への直接的な影響と、(2)金融市場や投資先が影響を受けることに伴う間接的な(アセットマネージャーとして)影響、の両方に対応する必要があります。当社グループは、TCFDの提言を踏まえ、機会及び物理的リスク、移行リスクについて、短期・中期・長期の目線での把握に努めています。
今後は、複数のシナリオ分析を実施・検証し、財務的な影響等を把握するよう努めていきます。

リスク管理

当社グループは、リスク管理の基本的事項を定め、想定し得る個々のリスクを予め把握し、適切に管理することで、当社グループの保有するリスクを全体的に管理し、当社グループの健全性・適正性の確保に資することを目的として、グループリスク管理委員会を設置しています。グループリスク委員会は、原則として四半期に1回開催され、「リスク管理プロセス」に沿って、重要な顕在化事象に加え、想定し得る潜在的なリスクを把握し、適切に管理し、リスクの認識と対応策の整備・運用を実施しています。
また、グループリスク委員会は、開催の都度、その内容を取締役会に報告し、取締役会では、その報告により、リスクの所在・種類、対応策及びその実施状況、並びにリスク管理の状況について監督することで、当社グループを取り巻く経営環境や経営戦略に対し、適切なリスク管理態勢を確立しています。
気候関連問題のリスクは、特定の独立したリスク分野ではなく、様々なリスク分野に影響を及ぼす要因と捉えています。そのため、当該「リスク管理プロセス」において、各リスクの状況を把握・評価する際に、気候関連問題のほか、ESGの各要素を考慮することで、当社グループ全体の気候関連問題のリスクも管理していますが、気候変動問題のリスク管理態勢については、今後も継続的に改善・強化を検討・実行していきます。

指標と目標

当社グループの事業活動に伴うGHG排出量のうち、Scope1・Scope2※1の合計は、約132.77tCO2e(2021年度実績)であり、その大半はオフィスの電力使用に伴う排出となります。当社グループでは、2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、脱炭素化に向けた取り組みを具体化していきますが、電力使用による排出を抑制するため、再生可能エネルギー電力の導入等により、2030年度にはGHG排出量33%削減(2020年度基準比)を目標としています。また、当社グループでは、気候関連に関するリスクの軽減や機会の実現を目的に、指標を定め、目標を設定し、そのモニタリングに取り組んでいます。これらの指標の進捗状況については、少なくとも年に1回かつ必要に応じ、経営会議及び取締役会に報告されます。
指標として定めているGHG排出量に関する実績推移は、以下の通りです。なお、Scope3の排出量については、算定を進めており、今後、排出量を把握し、削減するよう努めていきます。

2020年度 2021年度
Scope1
(直接的排出)
6.05 6.13
Scope2
(間接的排出)
135.93 126.64
合計 141.98 132.77
前年比▲6.5%

単位:tCO2e

  • 算定期間
    2020年度:2020年4月1日~2021年3月31日
    2021年度:2021年4月1日~2022年3月31日
  • 算定範囲
    当社グループの内、国内法人、韓国法人、香港法人※2
  • ※1 Scope1:当社自らの直接排出、Scope2:他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出
  • ※2 所在国の排出係数を使用

スパークス・グループの事業活動に伴うCO2排出量削減

責任投資に係るTCFD提言への取り組み

スパークス・グループ内のアセットマネジメント会社が、受託しているポートフォリオの運用を通じて、投資先の気候変動への対応状況を分析し、影響度を評価する取り組みについては、以下の通りです。

ガバナンス

当社グループは、「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」というパーパスを掲げ、この達成のため、顧客よりお預かりする全ての資産に関する顕在・潜在双方のリスクと機会を適切に把握、管理しております。
具体的には、責任投資の監督責任、説明責任を果たすため、当社取締役会の諮問機関として、グループCIOを委員長とする責任投資委員会を設置しています。なお、責任投資委員会には、全ての社内取締役、グループ執行役員が委員として参加し、少なくとも四半期に一度は開催され、その内容について適時に取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。また、責任投資委員会における責任投資原則の実践に関する議論を具体的に進めるため、責任投資推進室を設置しております。
当該委員会においては、グループ各社の投資政策委員会(もしくは同等の組織)から責任投資の実施状況の報告が行われるほか、責任投資ポリシーなどの変更承認、責任投資の実施に関する年次報告書の承認などを行っています。
なお、当該委員会には外部アドバイザーが陪席し、独立した立場から、報告や審議内容に対する助言がなされ、責任投資に関する最新の動向が共有されています。

  • 体制図は、ページ上部の「ガバナンス体制図」を参照

戦略

気候変動問題の解決のためには、投資先企業が気候変動に関するリスクと機会を中長期的な目線で経営戦略に組み込み、対応を進めることが重要であると認識しています。アセットマネージャーとして、投資先企業の気候変動に関するリスクと機会が、顧客資産の運用ポートフォリオに及ぼす影響を把握するため、運用資産残高の大部分を占める、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略の、2021年12月末時点のポートフォリオについて、S&PGlobalにシナリオ分析を委託し、実施しました。なお、2021年12月末時点の、当社グループの投資戦略別運用資産残高は、表の通りです。

単位:億円
日本株式 11,326
OneAsia 1,180
実物資産 2,543
プライベート・エクイティ 1,457
合計 16,507
  • 【上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略】は、表中の「日本株式」と「OneAsia」の合計です。
  • 【プライベート・エクイティ投資戦略(未来創生ファンド)】は、表中の「プライベート・エクイティ」のうち、1,132億円です。

2℃未満目標との整合性:温室効果ガス移行経路評価

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオとベンチマークについて、移行経路アプローチに基づき温暖化対策のための国際目標との整合性を評価しました。S&P Globalの温室効果ガス移行経路評価を利用することで、ポートフォリオにおける2℃未満目標に対する整合性の程度を把握することができます。
本評価では、過去の実績と将来(中期)の予想排出量の双方を評価対象とし、投資先の時間経過に伴う排出削減が温暖化防止目標に沿った適正な水準にあるかどうかを検証します。その結果、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオでは、1.75℃未満の水準にあるとの評価になりました。
なお、結果算出にあたっての主な制限として、過去のデータを非開示としている企業が存在するため、データカバー率がポートフォリオについては約25%、ベンチマークについては約56%と、すべての持ち分について評価できなかったことが挙げられます。
今後、データのカバー率が高くなれば、将来的なポートフォリオにおける評価結果は現状と異なってくる可能性があります。

移行リスク

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける、気候関連リスクの財務的インパクト(将来のカーボン・プライスが及ぼす財務への影響)を評価しました。
上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける将来負担すると推定される炭素コスト(Unpriced Cost of Carbon : UCC)割当分の多くは素材セクターであり、地域別には大半が韓国となっていることから、当該戦略のポートフォリオは、韓国国内でのカーボン・コストの上昇をもたらす気候関連の政策変更リスクに最も影響を受けるものと考えられます。投資先企業が将来負担するUCCに対して、現時点でどの程度支払う能力があるかを示すEBITDAアット・リスクは、高位シナリオに基づく2030年時点のポートフォリオ加重平均値で約8.99%、一方ベンチマークは8.48%でした。

  • パリ協定に整合し、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオ

セクター別UCCの内訳

地域別UCCの内訳

物理的リスク

上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける物理リスクを、2050年時点の高位シナリオに基づき評価しました。7つのハザードタイプ(水ストレス、山火事、洪水、熱波、寒波、ハリケーン、海面上昇)のうち、リスクスコア高かったのは、水ストレスと熱波でした。

  • パリ協定に整合し、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオ

ハザードタイプ別複合物理的リスク

出所:S&P Globalデータよりスパークスにて作成

上記のシナリオ分析は、特にエンゲージメントの際に、重要であると認識しており、より詳細なデータを調査活動に利用しています。物理リスクにおいては、海面上昇、洪水、台風などのリスク、水資源へのアクセスリスクなどのシナリオ分析を行い、現状のリスク評価、ならびに今後の改善についてモニターしていく計画です。また、移行リスクにおいては、現状のGHG排出量のモニターだけでなく、カーボン・プライスの変化に伴うシナリオによる事業、投資採算の影響について検討しております。
投資先企業の戦略、カーボン・プライスの動向など不透明要因も多く、データの改善が求められていることから、信頼のあるデータの調査、各種研究などの動向をみて、現実的なシナリオ分析へと継続して改善していく方針です。

リスク管理

当社グループは、投資先企業の調査・分析及び投資判断において、企業の定性的評価を重視しており、個別企業の調査において、期待投資リターンの評価を行うとともに、ESGに関する機会とリスクを評価しております。特に気候変動においては、投資先企業の物理的リスクと移行リスクに関する定性的評価に加えて外部データベンダーを利用できる体制を整備しています。また、外部ベンダーによるリスク評価の動向の確認や新たな手法についてもその動向を注視しています。

指標と目標

当社グループは、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、1企業として、積極的に活動を行う所存です。そして、2050年までにすべての投資先企業、案件が温室効果ガスの排出量についてネットニュートラルを達成することを目標といたします。
上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略の2021年12月末時点のポートフォリオに関して、TCFDが開示を推奨しているカーボンフットプリント(事業活動に伴って排出される温室効果ガスのCO2換算量)、加重平均カーボンインテンシティ(WACI : Weighted Average Carbon Intensity)を、以下の通り算出しました。

  • カーボンフットプリント

    1,201,434

    (Scope1・Scope2合計)
    単位:tCO2e

  • WACI

    167.07

    (Scope1・Scope2合計)
    単位:tCO2e/百万米ドル

上記、カーボンフットプリント、WACIのいずれの算出に関し、投資先の開示情報や、使用可能な開示情報がない場合はモデリングによる独自アプローチによりGHG排出量を算出するS&PGlobalのデータを使用しています。なお、Scope1及びScope2を対象に算出しています。当社グループの運用資産において、GHG排出量や外部評価機関の評価などは、分析を補完するために積極的に活用する方針ですが、データの信頼性、評価方法の違いがあることから、数値を比較するのではなく、データを継続してモニターし、今後の利用方法を検討しています。

顧客資産の運用のうち、個別戦略による目標

【上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略】

当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、積極的に活動を行う所存です。したがって、2050年までにはすべてのポートフォリオの保有銘柄が温室効果ガスの排出量についてネットニュートラルを達成することを目標といたします。
そのためには、投資先企業が、パリ協定に従い温室効果ガス削減計画を立案し、実行していくことが望ましいと考えます。
ただし、それまでのプロセスとして、すでに排出量が少ない企業、パリ協定に基づき削減施策を実行している企業にだけ投資するのではなく、今後削減施策を実行すると思われる企業を支援することが重要と考えます。
したがって、当面の目標としましては、2025年までには、ポートフォリオの50%以上がTCFDに賛同を表明し、排出削減計画を実行している企業とすることとし、なるべく多くの投資先企業が賛同することを働きかけてまいりたいと思います。

【プライベート・エクイティ投資戦略(未来創生ファンド)】

当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として積極的に活動を行う所存です。2050年までには、すべての投資先企業が温室効果ガスの排出量についてネットニュートラルを達成することを目標とします。それまでのプロセスとして、当該投資戦略の投資担当者が、投資先企業のTCFD賛同に向けてのガイド役となることを目指します。ガイド役として、投資先企業が未上場の段階から気候変動に関する財務情報開示に向けて最大限取り組めるよう、気候関連リスクと機会の評価、そしてその財務上の影響についての議論に参加します。

<参考>
当社グループは、企業活動や消費行動などの人類の活動が環境にもたらすマイナス面を減らし、プラス面を増やす活動に対して、事業を通じて積極的に関与してまいります。
特に重要課題であるカーボンニュートラルの実現に向けて、ファンドスキームを活用した再生可能エネルギー発電施設の建設・運営すること等を通して貢献してまいりました。今後も投資運用サービスを通じた地球環境問題への対応を行ってまいります。
なお、顧客資産の運用及び当社グループによる再生エネルギー事業を通じた年間CO2排出削減貢献量は、約254,207 t-CO2eでした。

  • 再生エネルギー事業を通じた排出削減貢献量算定範囲・方法
    [算定期間]2021年1月1日~2021年12月31日
    [算定範囲]算定期間内で稼働している発電所(太陽光・バイオマス・風力)
    [排出係数]0.000453t-CO2/kWh
    再生エネルギー事業を通じた年間CO2削減貢献量算定にあたっては、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(地球温暖化対策の推進に関す
    る法律)」で「代替値」として公表されている排出係数を基本的に使用