スパークス・グループ株式会社

30:宇宙大航海時代の夢に投資する

リスクマネー

月に基地ができる時代は、もうすぐそこだ

縁あって、宇宙ベンチャー企業の経営者にお会いする機会がありました。AIやロケット工学が日々進歩する中、宇宙開発に向けた技術革新も目を見張るものがあります。新しい宇宙ビジネスの時代が始まっていることを実感しました。今回は、宇宙開発ビジネスに対する私たちの考え方についてお話ししてみます。
これまでスパークス・グループは、宇宙ビジネスに取り組むベンチャー企業数社に対して投資を行ってきました。2017年には、月に乗り物(ローバー)を運ぶチャレンジをしているアイスペースへの投資を行っています。
どうしてそんなにまでして月に到達したいのでしょうか。
実は、月の上に行くと、いろいろなことができます。まず、月の映像をリアルタイムで手に入れることができます。これにより、月面に関する調査が急速に進んでいきます。
また、月には水があるかもしれないと言われていますが、もし発見できれば、月に住んだり、宇宙開発の拠点を作ったりすることも夢ではなくなるでしょう。
また、月に拠点を作ることができれば、宇宙開発の費用が劇的に下がることが容易に推測できます。ロケット打ち上げのたびに地球の重力圏を突破する必要がなくなるからです。そのため大幅なコストカットが可能になり、アイスペースの試算によれば、現在の100分の1になるといいます。
宇宙船は、重力圏を脱出するのに90%の燃料を使うと言われています。それが必要なくなるのであれば、非常に大きな変革といえますし、大幅なコストカットが可能になるのも当然でしょう。そうすると、月から安価に衛星を打ち上げることができるようになるため、衛星の数が増え、全地球測位システム(GPS)の精度を大きく上げることができます。
地球上のほぼ全地域のリアルタイム情報を24時間常に入手できるようになるのです。私のような素人が考えても、これが実現すると、その応用領域はものすごく大きいことがわかります。

宇宙ビジネスとキャッシュフローの泉

内閣府の試算では、宇宙産業市場は現在1兆2000億円規模で、2030年代の早期に2兆5000億円規模まで拡大すると見込まれています。宇宙開発が進めば、宇宙への旅行、衛星のメンテナンスや燃料補給、宇宙での太陽光発電、そして月面の資源開発など、さまざまなビジネスの機会が広がります。
また、実際に月に行くことはない人も、宇宙の醍醐味を味わうことができるかもしれません。現在はVR(仮想現実)の技術開発も進んでいます。例えば、マクドナルドの月1号店を作って、VRで〝スペースマック〞を食べられたらおもしろいのではないでしょうか。こうした世界が仮に現実になったら、それだけで巨大なキャッシュフローを生むビジネスが始まります。
月面拠点を待たずとも、GPSの精度は向上していきます。2018年末から本格運用が始まった日本版GPS衛星「みちびき」を活用すると、位置情報の誤差は数センチまで縮まるといわれます。スパークスの未公開企業ベンチャー投資の「未来創生ファンド」で投資しているマゼランシステムズジャパンは、「みちびき」に対応したチップ型受信機を開発・販売し、クボタやヤンマーといった農業機械メーカーが実用化している自動運転トラクターをはじめ、ドローンや自動車への導入を目指しています。
マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツさんが社外取締役を務めるカイメタは、自家用車にも搭載可能な平面アンテナの製造を始めています。日本ではスカパーJSATからの出資も受け、スカパーの通信衛星を通じて車同士のデータのやり取りができる取り組みのデモンストレーションを始めています。
このように、宇宙ビジネスの将来を考えていくと、小さなキャッシュフローの泉が、あちこちで湧き出し始める可能性を強く感じます。

イザベル女王のようにリスクマネーを供給する

時代をさかのぼれば、15世紀はまだ世界が平面と考えられていました。そうした折、コロンブスが大西洋を横断し大航海を成功させたのは、リスクマネーを提供したスペインの「イザベル女王」の存在なくして考えられません。
スパークスは、キャッシュフローの泉を見つける投資家として、衛星関連ビジネスなどから生まれるリターンを着実に汲み上げて、将来の投資につなげていくことに注力します。同時に、宇宙を舞台にした大航海時代に、持続的にリスクマネーを供給できる「堅実で賢明な投資家」でありたいと考えています。2020年4月に、宇宙を
中心とする新しい領域での投資仮説(インベストメント・インテリジェンス)を構築・検証し、投資を行うための会社としてスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー(SIF)を設立し、同年6月末には、このSIFを運営者とする「宇宙フロンティアファンド」を立ち上げています。